ゆうらす第18号
 


 
ロシア語”腕試し”2都市の旅
伊藤 隆(東京都)「国分寺健康守る会」及び「ロシア語勉強会」会員
 ロシア語勉強会を友人たちと始めて3年目に入った今年春、ロシアに行って“腕試し”をしてみようという、身の程も知らぬ話がまとまり、会員4人を含む一行9人で5月末、サンクト・ペテルブルグとモスクワへの旅に出た。旅程は1週間、奇跡的に連日雲ひとつない晴天に恵まれた旅だった。
 サンクト・ペテルブルグは深い緑の中にライラックやマロニエの花が満開でことのほか美しい風情であった。フォンタンカ運河の橋の上でしばしドストエフスキーの「白夜」の情景を思い起こした。白夜といえば、夜の11時頃まで明るいので、今食べているのが昼食なのか夕食なのかこんがらがってしまうほどだった。その日の夕刻は郊外の彫刻家の古めかしい木造のアトリエを訪れ、ご家族と夕食を共にした。ソ連崩壊前後の彼の創作活動の様子などを伺った後、歓談に入り、我々はあらかじめ用意しておいた日本の歌“春が来た”を露語訳(ベスナ・プリシラ)で唱い喝采を得た。
 次の日の午後は小型遊覧船と小編成の民族舞踊団を貸し切りで頼み、ネバ川の上で1時間ほどバヤンやバラライカの演奏、民族舞踊、ロシア民謡などを楽しんだ。最後にはわれわれも全員引っ張り出されて踊り、そして歌った。ここでも例の“春が来た”の楽譜を楽団員に渡したらすぐ弾き出してくれたので、みんなでロシア語で歌った。男性歌手はたまたまわれわれ一行のIさんを引っ張り出してイタリア歌曲“オー・ソレ・ミオ”を一緒に歌い出したが、Iさんはれっきとしたプロの声楽家、絶妙の彼女の声に彼らは目を丸くした。
 モスクワでは2日目に、郊外のトロイツェ・セルギイエフ修道院の大聖堂を見学した後、玩具博物館に立ち寄りマトリョーシカをはじめロシアの玩具を見学後、私が日本から持ってきた古いコケシを説明員に渡したところ、帰りの玄関先に館長らしき年輩のご婦人が現れ、「これは当館に陳列させてもらいます」と彼女から丁重なお礼の言葉を頂き、由来などいろいろ尋ねられた。
 話は前に戻るが、サンクト・ペテルブルグで彫刻家のアトリエを訪れた時、会食の音頭でご多分に漏れずウォッカでの乾杯があったが、こうした時、日本人の言う「カンパーイ!」にロシア人も同じような声を挙げるというので、ロシア人ガイドに何と言うのか聞いてみた。彼女の言うには、ロシア語のカムパーニアは“仲間”という意味のほか“同席(を喜ぶ)”とか“ご交誼よろしく”というような意味もあって、日本人の「カンパーイ“」に合わせてロシア人が「カムパー(ニ)ィ…!」とやっても、いっこうおかしくない。とのことであった。これは日本へのいい土産話となった。ちなみに、露語教室会員4人の旅の目的“腕試し”は、ほとんど実績がなかった。

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